社内不倫が起きた時に想定される経営者のリスクと取るべき対処法

同じ社内で仕事をしていれば、男女それぞれが惹かれあってしまうことは自然なことでしょう。通常の社内恋愛であれば経営者として暖かく見守っていくことも考えられると思いますが、恋愛といえど社内不倫となると話は変わってきます。
会社は非常に濃密な人間関係の場なので、社内恋愛や社内不倫の発生は避けがたいものですが、社内不倫が会社に及ぼす悪影響は計り知れません。
会社の健全な運営やほかの社員の士気を守るためにも、経営者として社内不倫にはしっかりと対策しなければいけませんし、万が一社内不倫が起きてしまったときには適切に対処していくことが重要です。
今回は、社内不倫が引き起こす可能性のあるトラブルや、社内不倫に対して経営者が取るべき対応、社内不倫をした社員を安易に解雇することの危険性について詳しく見ていきたいと思います。
Contents
社内不倫が引き起こす可能性のある社内トラブル
社内不倫は「不倫」という不法行為なのでそれが社内で起きているとしたら「マズい」「どうにかしなければ・・・」と思いますよね。
しかし、実際にどのようなトラブルが起こりうるのか、そのリスクについて完璧に把握されている経営者の方は少ないように感じます。
ここでは、会社にどのような不利益が起こりうるのかを見ていきます。
不正行為が発生する
社内不倫をしている者同士が恋愛感情と業務の境目がなくなり、いわゆる公私混同をしてしまうと、経費精算や勤怠データ、人事異動などに不正を働くことはよくあることです。
また、社内不倫の関係がうまくいかなくなってしまったときに、立場が上の者から立場の下の者にセクハラやパワハラのような行為をするというトラブルに発展することがあります。
不倫の被害者から訴えられる
通常の不倫であれば、基本的に、不倫をしていた当事者2人と不倫された被害者の関係の中でトラブルの解決を図っていきますが、不倫が社内不倫で会社の業務中に行われている場合だと、不倫された被害者は自分の配偶者が勤務する会社に対して損害賠償請求をする可能性が出てきます。
社内不倫が起こりうるような環境を見逃していたという可能性が出てくると不倫の被害者からの訴えを避けられないこともあります。
業務の生産性が低下する
社内不倫の関係が悪化して別れるなどに至った場合、当事者たちの業務の生産性が下がることは避けられないですし、彼らがもたらすギスギスした雰囲気が、周りの同僚たちや部下たちに不快感を与え、業務に支障をきたすレベルになる場合があります。
また、上記で示したように、不倫の被害者から訴えられたりクレームを受けたりすることで生産性の低下につながることもしばしばです。
情報漏洩が起こる
不倫関係にある片方の社員が高度に情報の機密性を保持しなければならない部署で勤務しているような場合に、不倫相手に気を許し、「この人だったら情報を教えても大丈夫」と油断してしまい部署外へ公開してはならない情報が漏れてしまうことは珍しくありません。
それがのちのち大きなトラブルを招く恐れもあるのです。
関連記事:社内不倫に対して会社としてどのような対処ができる?解雇は可能?
企業側が社内不倫について不倫被害者から責任を問われる可能性のある条件
社内不倫が会社に与える可能性のあるトラブルとして、不倫被害者から損害賠償請求などの訴えを起こされることをご紹介しましたが、社内不倫が起きていたからと言って必ず訴えが認められるわけではありません。
以下の条件がそろっているときに、被害者からの訴えが認められて会社が責任を取らなくてはいけなくなりますので、その条件についてしっかりと確認し、事前に対策を取っておくことが大切です。
不倫が不貞行為に該当する
不倫が不法行為として認められ、損害賠償請求の対象になるためには、基本的に、肉体関係を持っていたことが必要とされます。
そのため、社内不倫において肉体関係を持っておらず、ただの二人きりで飲みに行ったり、社内で親密な時間を過ごしていたりしても、倫理的には大問題ですが、法律上は不法行為とは認められず、会社が損害賠償請求の責任を取る必要のない可能性が高いです。
事業に関連して社内不倫が起きた
社員が社内不倫をした場面が、企業からの命令下にある業務の執行に関連して社内不倫を行ってしまったと認められる場合は会社が責任を取らなければいけなくなる可能性が高くなります。
例えば、社内の施設で肉体関係を持った場合や、社用車での移動中に関係を持った場合、宿泊を伴う出張中に不倫関係になった場合などがそれにあたります。
企業の監督に過失がある
企業が社員の監督について過失があると認められる場合や、相応の注意を払っていないとされる場合、社内不倫についての社員教育を怠っていた場合は法的責任を会社が負わなければいけない可能性が出てきます。
反対に、企業側に過失がなく、相応の注意を払っていて不倫を防止することができないと判断される場合は、法的責任を負わずに済むことになります。
そのため、経営者として企業を守るためには、社内不倫が業務中に行われないよう、しっかりと監督していたということを客観的に示すことができるように準備しておくことが大切になります。
社内不倫に対して経営者が取るべき対応
社内不倫は起きないように未然に防ぐに越したことはありません。しかし、どう対策していても、男女の関係は起きてしまう時は起きてしまうものです。
では、万が一社内不倫が自分の経営する会社で起きてしまったら、どのように対応すればいいのでしょうか。
徹底的な調査によって社内不倫の実態の証明を行う
社内不倫を行った社員に対して、厳しい処分を行っていくと思いますが、その際は徹底的な調査によって社内不倫が本当に行われていたという事実確認や自社が被った金銭的損害や社内外のイメージダウンなどの損害などの正確な把握を行わなければいけません。
また、就業規則上の懲戒規定に抵触していることを客観的に証明できる証拠も必要になります。
社内不倫をした社員に対して早く処分を行わなければと焦って処分を実施し、それが必要以上に重い処分を下してしまった場合には、不当な懲戒処分として労務のトラブルになるリスクもありますので、細心の注意を払うべきでしょう。
まずは、落ち着いて不倫をした社員に対しての調査を行うようにしましょう。ポイントとしては、社内不倫をしていたことによって「業務を正常に行っていなかった」「業務に支障をきたした」ことを客観的に立証できるかが重要になります。
法的な証明になる証拠を取るための調査は素人ではなかなか難しいので、この場合は調査のプロである探偵に調査を依頼するのが安全かつ確実です。
どの懲戒処分が適切かを慎重に判断する
社内不倫をした社員に対しての調査が完了したら、その証拠をもとにどのような懲戒処分が適切かを慎重に判断していきます。
懲戒処分としては、以下の処分の中から検討していきます。
・戒告(口頭注意)
・始末書提出
・減給
・出勤停止
・降格
・退職勧告
・懲戒解雇
調査によって集めた証拠と会社に及ぼした影響の度合いに応じて、この中から適切な処分を考えていく必要があります。もしご自身での判断が難しいと感じた場合は、弁護士など法律の専門家に相談しながら決めていくといいでしょう。
辞めさせたくても安易に解雇するのは危険
社内不倫をしていた社員はすぐにでも辞めさせたい!クビだ!という考えの経営者の方もいらっしゃるかもしれませんが、安易に解雇するのはとても危険です。
懲戒解雇は、数ある懲戒処分のなかでもっとも重い処分ですので、懲戒解雇を適用するためには相応の理由と確実な証拠が必要となります。
社員の社内不倫が、企業運営をどの程度阻害し、企業に対しどの程度の損害を与えたかによって懲戒解雇処分が認められるのかが決まってきます。懲戒解雇をするほどの損害を被っていなかったり証拠が不十分だったりする場合は懲戒解雇が認められないどころか、反対に不当解雇として会社が訴えられてしまう恐れがあります。
どんなに辞めさせたくても安易に懲戒解雇処分をするのは危険ですので、慎重に判断しましょう。
社内不倫を理由に解雇すると不当解雇と見なされてしまう
上記でも触れましたが、現在の判例では、社内不倫を理由として解雇することは原則として不当解雇とされています。
これまでの裁判事例として、
・不倫相手を優遇するために勤務シフトを勝手に何度も変更した
・会社のパソコンで勤務時間中にも不倫相手と業務に無関係なメールを多数やり取りしていた
・不倫相手とトラブルを起こした際、休み時間に不倫相手をビンタした
などの会社側の訴えがあり、不倫の当該社員にかなりの問題があったと言えるようなケースでも、男性社員に対する解雇は不当解雇とされてしまっています。
社内不倫を理由に従業員を解雇すると不当解雇になる可能性が高い理由としては、裁判所が「原則として、不倫は従業員の私生活上の問題であり、たとえそれが違法行為であっても、通常は会社とは無関係であり、不倫という私生活上の問題を理由に従業員を解雇することはできない」と考えているためです。
そのため、社内不倫で解雇するためには、社内不倫が私生活上の問題にとどまらず、会社に金銭的、評判などの重大な損害を与えているということを証明していかなければならず、解雇することはかなりハードルが高いのです。
関連記事:【経営者必読!】社内不倫を理由に解雇すると不当解雇になる?適切な対処法
どうしても社内不倫をした社員を辞めさせたい場合は「退職勧奨」がお勧め
社内不倫を理由に解雇したら不当解雇になってしまうとわかっていても、どうしてもその社員に辞めてほしいという場合もあるでしょう。
その場合は、懲戒解雇処分より軽い退職勧奨を行うのがお勧めです。
退職勧奨とは、企業から社員に対して個別に退職を勧めることで、解雇とは違い、あくまで本人に退職について了解してもらい、同意の上で、退職届を提出してもらって退職してもらうことを目指す方法です。
退職勧奨を穏便に進めたい場合は、退職金の増額や再就職先のあっせんなど、その社員にある程度のメリットを提示し譲歩した条件を提示する方法が有効です。
まとめ
社内不倫はとてもデリケートな問題で、男女の問題が主になっているので、対応の仕方を間違えてしまうとさらに大きなトラブルを招いてしまいます。
そのうえ、どの会社でも起こりうる問題であるため、あらかじめ会社として対応方法や処分の基準を決めておくという対策が必要になります。
社内不倫が起きてしまうと、その社員に対しての対応も難しくなり簡単には解雇できない上に、他の社員の士気が下がったり、社内外で会社のイメージがダウンしたりするリスクも出てきます。
経営者として、社内不倫のリスクをしっかりと把握したうえで対策を講じておくことが何より大切なのです。また、万が一社内不倫が起きた場合、適切に処分を行うためにも社内不倫の法的証拠を集めることが重要です。
不倫の証拠や被害状況を示す証拠についてはプロの探偵に調査を依頼することをお勧めいたします。
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