【プロの探偵が解説】GPSを設置する行為は犯罪?どんな罪に問われるのか

GPSを設置すれば、相手が今どこにいるのか、今日一日どこで過ごしていたのかを把握することができるため、子供や認知症の老人につけている方も少なくないでしょう。
子供や認知症の老人の安全を考えれば、GPSを持たせることは何も問題はないのですが、使い方を間違ってしまうと罪に問われる可能性もあります。特に、GPSはその特性から浮気調査に使おうとされる方が非常に多いのですが、状況や使い方によっては犯罪になってしまうため注意が必要です。
今回は、GPSの設置によってどのような罪に問われる可能性があるのか、そもそも浮気調査にGPSを使っても問題はないのか、などを詳しく見ていきましょう。
Contents
GPSを使って浮気調査するのは違法なの?
調査のプロである探偵が行う浮気調査でも、GPSを使ってターゲットの居場所を調べることはよくあることですし、探偵事務所のホームページや広告でも、GPSを使った浮気調査を売りにしているものをよく目にするかと思います。
しかし、ターゲットに許可を取らず勝手にGPSを設置することは問題にならないのか疑問に感じますよね。結論から言えば、浮気調査にGPSを使用することは法律上禁止されていないのです。しかし、浮気調査にGPSを使用することを法律ではっきりと認めている文章が記載されているわけでもありません。
探偵が探偵業を営む上でのルールが記載されている探偵業法においてもGPSを使った浮気調査を禁止する記述は存在しませんし、かといってGPSを使って浮気調査しても良いという内容も存在しないのです。いわゆる「グレーゾーン」というわけです。
「法律で禁止されていないのなら、やってもいいだろう」と思われる方もいらっしゃると思いますが、それは間違いで、ちょっとしたミスや少しの状況の違いで違法になる可能性が一気に上がってしまいます。
次の章で、GPSの設置によって問われる可能性のある罪について具体例を見ていきましょう。
勝手にGPSを設置することで問われる可能性のある罪とは
GPSを勝手に設置することでどのような罪に問われる可能性があるのでしょうか。それぞれの罪について詳しく見ていきましょう。
ストーカー規制法違反
ストーカー規制法違反とは、恋愛感情や好意の感情が満たされないことによって生じた恨みの感情から法律で定められた「つきまとい等」に該当する8つの行為を繰り返しておこなった場合に処罰されるものです。
もともとはGPSを設置して監視することは規制の対象外でしたが、GPSを悪用したストーカー行為が発生したために令和3年にストーカー規制法が改正され、今では相手に無断でGPSなどを仕掛ける行為が規制されることになりました。
ストーカー規制法違反と判断されれば、1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科せられます。
迷惑防止条例違反
先ほどご紹介したストーカー規制法はあくまでも恋愛感情や好意の感情が満たされないことによって相手につきまといなどのストーカー行為を規制するものですので、「浮気相手の女にGPSを仕掛けることは相手に恋愛感情を持っているわけではないし法律違反にならないのでは?」と思うかもしれません。
確かに、浮気相手の女性などにGPSを仕掛けたような場合、恋愛感情や好意の感情などに基づいていないので、ストーカー規制法違反には該当しませんが、都道府県が定める迷惑防止条例に違反するおそれがあります。
迷惑防止条例はほとんどの自治体でストーカー規制法の「つきまとい等」と同様の行為を禁止していて、その際に恋愛感情や好意の感情は必要としません。
迷惑防止条例違反の罰則は自治体によって多少異なっていますが、例として東京都の迷惑防止条例を確認すると1年以下の懲役または100万円以下の罰金と規定されています。
器物損壊罪
GPSを自分の所有物以外に設置する場合、器物破損罪に該当する可能性があります。器物損壊罪とは、他人の所有物を壊したり使えない状態にしたりした場合に成立する罪です。
浮気調査におけるGPSの設置は、相手にバレないように行うものなので、わざと車を壊すことはないと思いますが、GPSを設置したり取り外したりする過程で器物損壊罪が成立する可能性が考えられます。
器物破損となってしまうと3年以下の懲役又は30万円以下の罰金もしくは科料となります。
住居侵入罪
住居侵入罪とは、正当な理由なく人の住居や建造物に侵入した場合に成立する可能性のある罪です。
相手の車にGPSを取り付けるために相手の住居や敷地内に無断で立ち入ったのであれば、住居侵入罪が成立する可能性が出てきます。
ただ、パートナーと同居している自分の家でもある敷地であれば、住居侵入罪は成立しません。
住居侵入罪となりえるのは、パートナーと別居していて、別居先のパートナーの自宅に無断で立ち入ったような場合や、浮気相手の自宅に立ち入った場合に成立する可能性があります。
不正アクセス禁止法違反
GPSを仕掛けたい相手が自家用車を持っていない場合などに、相手のスマホにGPSアプリを入れて監視したいという場合もあるでしょう。
しかし、相手のスマホに無断でGPS監視アプリを仕掛ける行為も、GPSの機器を仕掛けるのと同様に罪に問われてしまいます。それが不正アクセス禁止法違反です。
不正アクセス禁止法では、不正アクセス行為(勝手にスマホにGPSアプリをインストールしたりするなどの行為)について何人(なんぴと)であっても禁じているため、仮に相手が夫婦や家族であっても違反となります。
不正アクセス禁止法違反となると3年以下の懲役または100万円以下の罰金が科せられます。
プライバシー侵害
GPSで得られる情報は、相手の位置情報なので相手の行動範囲がわかってしまうことになります。そのため、プライバシー侵害として訴えられる危険性もあります。
プライバシー侵害は刑事罰ではないので犯罪とはいえないかもしれませんが、民事訴訟の対象になる可能性があり、被害者からプライバシーを侵害されたとして損害賠償請求をされる危険があります。
反対に、GPSを設置しても罪にならないケースとは
先ほどの章で、GPSの設置によって問われる可能性がある罪について見てきましたが、逆にGPSを設置しても罪にならない場合もあります。
自分の所有物や共有名義のものにGPSを設置する
パートナーの行動範囲を知りたいためにパートナーが普段使っている自家用車にGPSを設置するケースは多いでしょう。その際、設置する車があなたの名義だったり、夫婦の共有名義の車であったりすれば罪に問われることはありません。
ただ、法律的な罪に問われることはなくても、今後パートナーの警戒心が強くなり浮気の証拠が取りにくくなったり、夫婦関係がさらに悪化してしまったりなどのリスクはあります。
法律的な罪とともに、それらのリスクについてよく考えたうえでGPSの設置を検討していくことが重要です。
参考記事:浮気調査のためのGPS設置がバレたらどうなる?バレる原因と成功のコツ
夫婦の共有財産であってもGPSの設置が罪に問われるケース
GPSを勝手に設置しても罪に問われないケースとして、夫婦の共有財産の車であれば罪に問われないとご説明しましたが、仮に夫婦の共有財産でも罪に問われる状況もあります。
どのような状況だと罪に問われてしまうのでしょう。
探偵だけでGPSを設置する
GPSは浮気調査において優秀なアイテムで、実際、探偵事務所でもGPSを利用することはありますが、探偵だけでGPSを設置してしまうと違法になります。仮に、車などの所有者からの依頼で探偵だけでの設置に許可があったとしても探偵だけでGPSを設置すると違法なのです、
GPSの設置は、あくまでも所有者が所有物の管理として設置するという意味で認められるものですので、探偵が取り付けて探偵がそのGPS情報を管理するとなると、「探偵が調査の為にGPSを取り付けた」という意味になってしまい、法律違反となります。
特に大手の探偵事務所でこのような違法のやり方でGPSを使った調査をしているところが見受けられますので、GPS調査を行う際に自分も立ち会うように指示されるか、自分もGPS情報を共有できるかどうか注意しなければいけません。
別居中のパートナーの車にGPSを設置する
先ほども触れましたが、別居しているパートナーの車にGPSを仕掛けるとなると、たとえ仕掛ける車が共有財産であったとしても違法になる可能性が高くなります。
GPSを車に設置するために別居中のパートナーの自宅に侵入しなければならないケースが多いですので、そうなると住居侵入罪になったり、ストーカー規制法違反になったりします。
さらに厄介な事として、別居しているパートナーに対してGPSを設置してそれがバレると「ストーカーみたいなところが嫌で離婚したかった」などと主張される恐れがあり、実際に離婚理由としてGPSの設置がストーカー行為と言われる可能性がります。
ストーカー規制法違反となってしまうと、完全にこちらが不利になりますし、裁判官の心証も悪くなりますので離婚の条件もこちらに悪くなってしまいます。
まとめ|GPSは浮気調査の有効アイテムだが使用は要注意!
今回は、GPSの設置がどのような罪になるのか、どのようなケースで違法になるのか、について見てきました。
GPSは相手の行動範囲や位置情報がわかるため、浮気調査においてかなり有効なアイテムではありますが、法律違反にならないように細心の注意を払う必要があります。
GPSを安全に合法的に設置できるのは、自分の所有物もしくは共有財産であり、自分の自宅内で設置した場合です。ただ、合法的に利用できてもGPSがバレた時にさまざまなリスクがあることも事実です。
GPSを安全に使用し、GPSから得られた情報でより効率的に浮気調査をするためには、浮気調査の専門家である探偵のサポートを受けながら行うのがベストです。浮気の証拠を手に入れたいと必死になりすぎて自らが犯罪者になってしまわないよう、慎重に行動するようにしてください。